2015年10月5日
TPP交渉の「大筋合意」を弾劾する(談話)
社会民主党幹事長 又市 征治
1.アトランタで開かれていたTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加12か国による閣僚会合は、5日朝(日本時間5日夜)、交渉が「大筋合意」に至ったとする声明を発表した。しかし、日本をめぐる協議では、「聖域」とされた「農産物重要5項目」のうち、牛肉・豚肉の関税を大幅に削減するとともに、コメは米豪両国に対し無関税の輸入特別枠を新設し、乳製品も大規模な低関税輸入枠を設定するなど、譲歩に譲歩を重ねた「合意ありき」の安易かつ拙速な妥協となった。国内農家への打撃は大きく、農業と農村の崩壊を進め、食料の安全・安定供給を脅かしかねない、今回の日本政府の前のめりの所行は、断じて容認できない。今回の関税大幅引き下げや特別枠の新設は、重要5項目について関税堅持を求めた衆参農林水産委員会の決議に反することが明白である。安倍首相は「関税撤廃の例外を確保できた」と強弁したが全くの茶番である。そのうえ、安倍政権の掲げる農業所得増や食料自給率向上、飼料用米の推進などの政策とも、全く整合性・一貫性が取れていない。社民党は、「TPP断固反対」との公約を弊履のように翻し、日本農業や農業を主たる産業にする地方の関連産業に壊滅的打撃を与え、国民の命と暮らしを脅かす今回の暴挙に対し、満腔の怒りをもって抗議する。安倍政権に対し、「合意」を直ちに破棄し、TPP交渉から即刻脱退するよう、強く要求する。
2.TPP参加による悪影響は、農林水産物に限らず、地域産業、雇用、食品安全、安価な医薬品など、国民生活の隅々にまで及ぶ。中でも、多国籍企業が進出先の政府を国際仲裁機関に訴える権利を保障する「ISDS(投資家・国家訴訟)条項」は、外国企業を主権国家よりも優位に置いて日本の司法権を骨抜きにするのみならず、日本独自の様々な規制や社会システムが提訴対象となる危険性があり看過できない。
3.TPP交渉は徹底した秘密主義で行われ、交渉内容や過程の文書が今に至るも一切明らかにされていない。国会審議など最低限の民主的手続きも踏まないままの「大筋合意」は、国民への十分な情報提供と幅広い国民的議論を求めた国会決議違反である。
社民党は、衆参両院にTPP特別員会を設置し、情報提供と交渉内容の説明の審議を行うよう求めてきた。また、民主党はじめ他の野党と共同で、「TPP情報提供促進法案」を衆議院に提出している。あわせて、社民党の福島みずほ副党首や照屋寛徳国対委員長をはじめ国会議員や有識者、市民ら約1600人が原告となり、秘密交渉を問題視し、TPP交渉の差し止めと違憲確認などを求める訴訟を起こしている。政府与党は、こうした動きを一顧だにせず、国民に秘密のまま交渉を妥結し、結論のみを押しつけようとしているが、真摯に情報の提供と説明責任を果たすべきである。社民党は、交渉内容の開示、国民への説明を強く求めるとともに、TPPの問題点やTPP参加による国民生活・国民経済等への影響と対策をただすべく、臨時国会で厳しく追及する。
4.たとえTPPが「大筋合意」されても米議会の承認は容易ではない。過去の貿易協定においても米国は、合意成立後、「サーティフィケーション(承認手続き)」の過程で相手国の国内法や社会制度、商習慣などが協定に相応しくないと判断すれば、協定承認を盾に米国の要求に沿うよう変更を求めてきた経緯がある。TPPでも日本が同様の理不尽な要求を受ける懸念は拭いきれない。社民党は、大企業とアメリカの利益のためのTPP参加に反対し農林水産業と地域社会を守る取り組みを国会の内外で一層強化するとともに、TPP協定案の国会承認阻止に向け、全力を挙げて闘い抜く決意である。
以上